ボコーダーの力を探る:音楽制作での使い方

目次
ボコーダーは、人間の声を解析し、外部の音源を使って合成した音声を生成する電子機器。1938年、ベル研究所のホーマー・ダドリーによって発明されて以来、音楽制作やサウンドデザインなどさまざまな分野で広く使われてきた。ここでは音楽制作におけるボコーダーの使い方を探る。
ボコーダーとは?
ボコーダーは、人間の声を解析し、外部ソースの音を利用して合成する装置。主に「キャリア信号」と「モジュレーター信号」の2つの要素から成り立つ。
- キャリア信号:楽器やシンセサイザーなど、合成音声の基となる周波数や音色を提供する音
- モジュレーター信号:人間の声。ボコーダーが解析してキャリア信号を変調するために使われる
ボコーダーの仕組み
ボコーダーの基本原理は、人間の声を複数の周波数帯域に分割し、それぞれを個別に解析すること。
異なる周波数範囲に調整されたバンドパスフィルター群を利用し、各フィルターの出力を整流・平滑化して、その帯域における振幅変化(包絡線)を抽出する。
モジュレーター信号の包絡線をキャリア信号の各帯域に適用することで、「キャリアの音色」と「声の発音特性」が融合した合成音声が生成される。
音楽制作でのボコーダーの使い方
ボコーダーの原理を理解した上で、実際に音楽制作で利用する方法を見ていく。ボコーダーは幅広いサウンドやエフェクトを生み出す強力なツール。以下に効果的な使い方のヒントをまとめる。
1. 適切なキャリア信号を選ぶ
キャリア信号は合成音声の基盤となる音。楽器音、シンセ音、録音素材など幅広く利用できる。目的の音質や周波数帯域に合わせて選択するとよい。
例:低く太い響きを狙うならシンセベースをキャリアとして使用。
2. クリーンで明瞭なモジュレーター信号を録る
モジュレーター信号は声。効果を最大限に引き出すにはノイズの少ない録音が必要。高品質マイクを使用し、静かな環境で収録することが重要。
3. 適切な設定を調整する
ボコーダーには多くのパラメータがある。周波数バンド数、変調深度、アタックやリリースの長さなどを調整し、狙うサウンドを探る。
4. エフェクトを加える
基本のボコーダー音にリバーブ、ディレイ、コーラスなどを重ねることで表現をさらに広げられる。自由に組み合わせて音を発展させていく。
5. 複数のボコーダーサウンドをレイヤーする
ボコーダー音を他のボーカルやエフェクトと組み合わせることで複雑で独特な音響が生まれる。
例:生声とボコーダー音を同時に鳴らして独自の存在感を出す方法。
まとめ
ボコーダーは音楽制作においてユニークで多彩なサウンドを作り出せるツール。キャリア信号の選択、クリーンなモジュレーター録音、適切な設定調整、さらにエフェクトやレイヤーを加えることで音楽に奥行きと個性を与えられる。
ただし、ボコーダーは制作手法のひとつに過ぎない。他のテクニックや要素と組み合わせることで、より完成度の高い音楽を作り出せる。
著者について

Genx
1982年生まれ、日本人のビートメイカー・音楽プロデューサー。実験的なヒップホップビートを制作。国際的な環境で育ったため英語が話せる。趣味は筋トレ、アートワーク制作、ウェブサイトカスタマイズ、Web3。韓国が大好き。
ウェブサイト:genxrecords.xyz