AIでビートを生み出す未来 ──『僕らの価値とは何か』を考える

AIでビートを生み出す未来 ──『僕らの価値とは何か』を考える

ヘッドフォンをかけ、深呼吸する。静寂から音楽が生まれ、ビートが心を打つ。音楽をつくる過程はアーティストにとって唯一無二の創造的旅路だが、近年はとりわけ人工知能(AI)の台頭によって大きく変化してきている。

二つの視点がある。
「AIで誰でも早くビートを作れるなら自分がやる意味はない」
「AIのおかげで早く作れるから大量に生み出せる」
一見、前者はネガティブ、後者はポジティブに映るが、この差は音楽制作の未来を分ける道筋になるかもしれない。

視点一:「みんなやるなら自分がやる意味はない」

この考え方には落とし穴がある。同じツールに誰でもアクセスできるなら、成果物は似通い、個性や作り手としての価値が薄まる、という前提に立っている。AIの便利なツールは確かに広く開かれており、一定のレベルまでのビートは誰でも作れる。ただ本当に問うべきは「どうやって自分を表現し、違いを示すか」だ。

視点二:「速く作れるなら大量生産できる」

こちらには技術の恩恵を最大限活かそうとするポジティブな姿勢がある。AIを使えば時間を効率的に扱え、アイデアを即座に形にできる。「大量生産」は単なる量産ではなく、安定して高品質な作品を届けつつ聴き手とのつながりを保ち、新しい音楽を提供し続けることにもなる。それはアーティストが秘めている力を引き出す手段にもなり得る。

未来の音楽制作の道筋

大切なのは、アーティスト自身がAIの影響とどう向き合い、どう使うか。AIビートメイクの便利さと効率を楽しみつつ、個性をどう保つかが鍵になる。

たとえばAIのビートをベースにしながら、自分の旋律やアレンジを重ねる。そうすれば時間を無駄にせず、ユニークな作品を生み出せる。

結論

AIと共存し活用することで、音楽に新しい地平が広がる。AIはあくまで道具であり、価値はその使い方と表現の仕方に宿る。個々のアーティストがAIをどう使い、自分をどう示すかが未来の音楽シーンを形づくる。

僕らの価値は、技術を巧みに扱いながら個性を守り、共感や感情を生み出せるかにある。AIとの関係をどう築くかによって、音楽制作の未来は無限の可能性を秘めている。

著者について

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Genx
1982年生まれ、日本人のビートメイカー・音楽プロデューサー。実験的なヒップホップビートを制作。国際的な環境で育ったため英語が話せる。趣味は筋トレ、アートワーク制作、ウェブサイトカスタマイズ、Web3。韓国が大好き。
ウェブサイト:genxrecords.xyz

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