よく海外のビートメイカーのトラックを聞いて、「この音黒いなぁ」と表現をする事があるかと思います。
特に90年代の曲を聴くと、「この曲はトラックが黒いなぁ」と言う人が多いと思います。
この黒い音の事を「太い音」、「煙たい音」、「古い音」、「日本人には出せない音」などと表現する方もいます。
この「黒い」音とは実際にはどうやって作る音なのでしょうか。
実は黒い音は簡単に作れる
私は黒い音を出したくて、長年作り方を研究してきました。
サンプリングソースの問題なのか、エフェクトの問題なのか、機材の問題なのか、複合された要素から成るものなのか、色々勉強し、実験をしました。
結果として分かった事は、日本人でも問題なく作れるという事でした。
黒い音の正体は実はこうだったんです。1. 音源のテンポを下げた時にピッチが下がる事で音がローファイになり、音の存在感が増すという事。
2. テンポが下がる事で音のリリースの伸びるという事。
この二つの要素が複合された結果だったんです。
詳しく見ていきましょう
ピッチが下がる事で音がローファイになるという件ですが、試しにピアノの音源を探してきて、フレーズをサンプリングして、ドラムマシン内でピッチを下げてみて下さい。
ピアノの音の周波数が全体的に低域に移動しましたね。
これが音が太くなったと感じる第1の要素です。
次に、テンポが下がる事で音のリリースの伸びるという件ですが、試しにスネアのサンプルを探してきて、サンプリングして、ドラムマシン内でピッチを下げてみて下さい。
音が始まってから終わるまでのの時間が長くなりましたね。
これが音が太くなったと感じる第2の要素です。
なぜか楽器がよりリアルに聞こえる
先ほどのピアノの例に戻りますが、ピアノの音色がよりピアノらしくなったと思いませんか?
サンプリングソースが何であろうと、その楽器がよりその楽器らしい音に聞こえる、それが黒い音の正体なのです。
ピアノのピッチをドラムマシンの中で下げるという事は、自然界ではありえない音を作り出すという事でもありますが、自然界にはない音がよりリアルに聞こえるのです。
不思議ですよね。
これが音のマジックなんです。
ですから、ヒップホップを作る時、曲のピッチをいじりながら作るビートメイカーの曲は音が黒い場合が多いんです。
ピッチをよく下げるビートメイカーと言えばMPCを使っている人達です。
レコードからサンプリングした後、ピッチを良くいじりますよね?
DAWでビートを作る人達はタイムストレッチという便利な機能がある為、「ピッチを下げて、テンポも下げて」ってやっている人はなかなかいませんよね。
私は、ヒップホップを作る人達の中でMPC使いの方が太いビートを作る傾向にあるのはこれが真の理由だと思っています。
ピッチを下げるとテンポも下がるので、サンプルをアタックの強いところでチョップして、組み直さないと曲のBPMにフィットしない事が多いんですが、この面倒くさい作業をひとつするだけで音の質感が全然違うのです。
この要領をDAWで生かせば、たちまちあなたの音も黒くなります。
「ピッチを制する者はビートメイキングを制する。」
ただ、ピッチを下げ過ぎると黒いを通り越して、何が起きているのか分からない音になってしまいますのでご注意を。
タイムストレッチだけではダメなのか
タイムストレッチでテンポを下げずにピッチを下げるだけでも音がローファイになり、音の存在感は増しますし、音は黒くなります。
ただ、下記の理由によりピッチとテンポの両方を下げた方がより黒くなります。
ピッチとテンポの両方を下げた方がより黒くなる
テンポを下げないと音のリリースは伸びません。
テンポを下げないということは、黒くなる要素を一つ消していることになりますので、使う素材によってはあまり黒くなったと感じない場合もあります。
ですから、ピッチを下げるときは同時にテンポも下げるという自然の現象を妨げない方がより黒くなります。