取引所によってはFiatではなく、ビットコイン資産をコラテラル(証拠金)にして信用取引を行うことができる取引所があります。
Bitfinex(BTCUSD)やQuoine(BTCUSD、BTCJPY、その他)などのビットコイン取引所などが例として挙げられます。
通常、信用取引をするときには主軸通貨を使うことはなく、決済通貨を証拠金に見立てて取引をします。
しかし、通常のルールは仮想通貨の世界には当てはまらなく、主軸通貨を証拠金として差し出すことができる取引所が存在するのです。
ビットコインを証拠金にする場合、証拠金の計算方法が決済通貨で取引する場合と大きく異なるので、利用する前に必ず仕組みを理解しておく必要があります。
では、決済通貨と主軸通貨での証拠金計算はどのように違うのかを解説していきます。
決済通貨での証拠金計算
BTCUSDを取引する場合、USDが決済通貨となります。損益は全てUSD建てで計算され、資金の増減はUSD建てで行われます。
ロングの場合
BTCUSDをロングし、予想が合っていた場合、決済したときにUSDの証拠金が増加します。
BTCUSDをロングし、予想が外れていた場合、決済したときにUSDの証拠金が減少します。
何の変哲もない、普通の計算方法です。
ショートの場合
BTCUSDをショートし、予想が合っていた場合、決済したときにUSDの証拠金が増加します。
BTCUSDをショートし、予想が外れていた場合、決済したときにUSDの証拠金が減少します。
こちらも何の変哲もない、普通の計算方法です。
主軸通貨での証拠金計算
では、BTCUSDを取引するとき、主軸通貨のBTCを証拠金にするとどうなるのか、見ていきましょう。
ビットコインを証拠金にした場合も評価額や損益の計算はUSD建てで行う必要があります。
証拠金に預けてあるBTCの評価額は一旦USDに変換されます。このとき、使用されるBTCUSDのレートは現在価格になります。
損益の増減は取引所によって仕様が違います。Bitfinexの場合、損失が出たときにはビットコインの資産が減少し、利益が出たときにはUSDの資産が増加します。Quoineの場合、損失も利益のいずれも精算はビットコイン建てになります。
この「証拠金の評価額を一旦USDに変換しないといけない」という仕組みがあることで、証拠金の計算方法がガラっと変わってくるというわけです。
ではロングとショートポジションでそれぞれどのように証拠金が計算されるのかを具体的に見ていきましょう。
ロングの場合
ビットコインを証拠金としてビットコインの「ロング」ポジションを持ってしまうと、リスクもリワードも2倍になってしまいます。
どういうことかというと、ビットコインの価格が上がれば、現物ビットコインの価値が上がると同時に保有ポジションの未実現の利益が膨らみます。
逆にビットコインの価格が下がれば、現物ビットコインの価値が下がると同時に保有ポジションの未実現の損失が膨らみます。
したがって、現物ビットコインの価値変動と保有ポジションの損益計算が同じ方向に向いているので、勝つときは2倍、負けるときも2倍になるわけです。
証拠金の変動が早くなってしまうということは、予想が外れたときは2倍の早さで証拠金の評価額が減少していくので、それだけマージンコールが発動してしまう可能性が高まるということです。
このように、ビットコインを担保にロングすると、レバレッジをかけていなくても勝手にレバレッジが効いてしまうので、初心者の方にはキツイ戦いになってしまうかも知れません。
ショートの場合
ビットコインを証拠金としてビットコインの「ショート」ポジションを持つと、つなぎ売りの効果が自動的に発揮されてしまいます。
どういうことかというと、ビットコインの価格が下がれば、現物ビットコインの価値は下がると同時に保有ポジションの未実現の利益が膨らみます。
ビットコインの価格が上がれば、現物ビットコインの価値が上がると同時に保有ポジションの未実現の損失が膨らみます。
つまり、ビットコイン価格が上がったとしても下がったとしても、利益も損失も出なくなってしまうのです。
よく考えてみれば、現物と保有ポジションが逆方向に向かっているので損益が相殺されてしまうのは当然ですね。(厳密に言えば、証拠金取引ではポジションを持っているときは金利を支払う必要があるので、ジリ貧状態になります。)
ビットコインを担保にビットコインをショートするのはビットコインの価格が下落しているときには有効に働きます。
なぜなら現物ビットコインを手放さずに、ビットコイン価格の下落による損失からヘッジすることができるからです。
逆に、ビットコインの価格の上昇時にも利益が出なくなってしまうので、現物を保有していても価値が上がることがなくなってしまいます。
ショートポジションの場合、ロングポジションのようなリスクはありませんが、今度は両建てを外すタイミングが重要になってくるのです。
まとめ
このように、ビットコインを証拠金にすると証拠金の計算方法が若干複雑になるので、このシステムに慣れていないトレーダーにとっては辛いかも知れません。
したがって、この記事を読んでもあまりピンと来なかったトレーダーは素直に決済通貨での取引に徹した方が良いでしょう。